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外傷性てんかん後遺障害等級第9級についての逸失利益算定裁判2例紹介

○「交通事故後の外傷性てんかんと後遺障害等級・逸失利益に関する判例紹介」の続きです。
外傷性てんかんで後遺障害等級第9級10号の認定を受けた方の損害賠償請求事件を受任しており、逸失利益に関する裁判例を探しています。取り敢えず以下の2判例を見つけたので紹介します。

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平成13年5月30日東京地裁(交民集34巻3号709頁)

(六) 逸失利益
 2481万1275円
ア 基礎収入
 逸失利益は将来にわたる稼働によって得られたであろう利益であるから、逸失利益の算定に当たって、休業損害と同じ初任給の数値を基礎とするのは、原告の昇給、昇格等の将来の発展性を全く顧慮しない結果となるので相当ではない。しかし、原告主張に係る平成9年の大卒男子の原告と同年代である35歳から39歳の労働者の平均賃金(702万3700円)をもって基礎とするのは、原告がかかる高額の収入を得られるであろうという蓋然性を裏付ける具体的な証拠が全くない以上(なお、平成4年(488万7730円、甲9の1)、平成5年(498万9960円、甲9の2)、平成6年(512万7960円、甲16の1から13、甲18)の原告の各年収は、いずれも男子大卒同年代(30歳から34歳)の労働者の平均賃金額(平成4年は560万4800円、平成5年は570万0200円、平成6年は573万0800円)に比べてかなり低い。)、原告を同年代の男子労働者の有する平均的な稼働能力のある労働者であることを前提とすることとなるので不合理といわざるを得ない。

 当裁判所は、原告が訴外会社に入社後相当程度営業経験を駆使して稼働するであろうと考え、また、前示の原告のこれまでの給与水準も併せて考慮し、原告の逸失利益を算定するための基礎収入としては、訴外会社における社員の賃金の平均値である468万1947円を採用するのが相当であると考える(甲19)。

イ 労働能力喪失率及び喪失期間
 原告は、前示のとおり、外来による抗てんかん剤の内服治療を受けており、てんかん発作がなければかろうじて日常生活を送ることができる状況にあることは認められる(甲18、22の1、2)。しかし、内服治療を受けていてもなお、頭頂部のしびれ、痛み、手のしびれ、興奮すると口が回らず昼間でも居眠りをしたり過食したりする症状又は体のだるさや腹痛などの副作用が見られるのであり(平成12年3月15日の診察による。甲26、原告本人)、また、原告にとっては、何時てんかん発作に襲われるのか、という不安を抱えながら日常生活を送らなければならず、自らの健康状態の維持、管理と抗てんかん剤の服用方法の遵守等の制約を受けなければならないであろうから、原告の選択し得る仕事の職種、範囲、稼働時間は相当程度制約を受けると考えられること(甲18、原告本人)、原告のような遅発性に発症したけいれん発作は治癒される可能性が低く、抗てんかん剤を生涯服用しなければならないこと(甲26。なお、被告らが提出する帝京大学教授中込忠好医師の意見書(乙8)は、一般的な観点からの所見の域を超えず、具体的に原告を診察していないことも考慮すると、原告の労働能力及び労働能力喪失期間を制約すべきであるとの所論は到底採用し得るものではない。)、を考慮すると、原告の労働能力喪失率については、前示後遺障害認定等級に相応する35%と評価し、喪失期間についても稼働可能年齢に至るまでの29年(ライプニッツ係数15・141)とするのが相当であると考える。

ウ 計算式
 468万1947円×0・35×15・141=2481万1275円

(七) 入通院慰謝料 180万円
 原告の負傷の内容、程度、治療経過等のほか、前示のとおり、治療期間中由紀子に相当な負担と心配をかけたと考えられること、本件事故により訴外会社での就労の機会を生かすことができなかったこと、等の諸事情を考慮し、前示金額をもって相当と判断した。

(八) 後遺障害慰謝料 640万円
 原告の身体に残存した後遺障害の内容、程度、これによる日常生活や仕事における不自由等から受ける精神的苦痛を慰謝するのに相当な金額である。

(九) 小計 3595万5003円


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東京地裁 平成4年9月29日判決(自動車保険ジャーナル・第993号)

(八) 逸失利益
(請求額5518万0216円) 2574万1502円
(1) 証拠(略)によれば、原告は、東京経済大学を卒業後、税理士資格を取得し、大原学園の講師をしていて本件事故に遭ったこと、本件事故以前の年収は、昭和59年が74万5000円、60年が283万円、61年が371万円であったこと、本件事故後は、株式会社資産税制研究所に1年間勤め、その後山本守之税理士事務所に税理士(平成元年9月20日税理士登録)として勤務し現在に至っており、年収は、昭和62年が363万6956円、63年が360万8136円、平成元年が400万4493円、2年が479万4242円、3年が481万1034円であること(なお、(証拠略)によれば、平成2年ないし3年の年収には慰安旅行積立金も計上されているので、43万円ないし11万円は右各金額から控除すべきである。)が認められる。

(2) ところで、証拠(略)によれば、勤務税理士の昭和58年度の平均所得(年収)は、調査によると500万円から700万円となっており、開業税理士を含めた税理士全体の所得も1500万円未満が約90パーセントを占めており、その平均所得はやはり500万円から700万円と分析されていることが認められる。更に、賃金センサス平成元年第一巻第一表・サービス業・企業規模計・男子労働者・大学卒・全年齢の年収は600万0700円である。

 そこで、原告の税理士としての能力、資質を加味して考慮すると、原告の年収も、将来的には少なくとも、右調査の平均所得、更には右賃金センサスにおける年収を下らないといってよい。
 従って、逸失利益の基礎とすべき原告の年収は、右賃金センサスの年収によるのが相当である。
 原告は、将来開業することを前提に、開業後の年収につき年代を追って530万円、700万円、1000円、1300万円、1500万円とすべき旨主張する。
確かに、原告と同年代の開業税理士の中には既に所得が1000万円を超える者がある(証拠略)。

 しかしながら、原告がいずれ開業する可能性は大きいにしても、開業税理士の所得は職業柄かなり格差があることに照らすと、原告の収入が右のとおりになると確実に予測することはできないというほかない。
 よって、原告の主張は採用することはできない。

(3) 次に、原告は、本件事故当時、健康な25歳の男性(昭和36年11月11日生まれ)であり、前記1のとおり、原告は、本件事故により、頭痛、耳鳴り、記銘力障害の症状が残り、また今後、脳挫傷の影響により外傷性てんかんの発作に見舞われるおそれがあり、そのため薬の服用が欠かせないこと、自賠責保険において9級10号の認定を受けたこと(証拠略)、激しいスポーツはできず、また、飲酒もできないこと、仕事面でも、無理ができず、また残業も制限されていること、難聴のため電話での会話に支障をきたすこともあること(証拠略)が認められる。

 これらの障害は、税理士の職種の特殊性に照らすと、原告の収入に影響を及ぼすものである。
 他方、原告の平成3年度までの年収が前記(1)のとおりであって勤務税理士の平均所得との差も次第に減少しつつあることや、開業した場合でも、将来、仕事に習熟し、実績を積むことによって補える部分があることを考慮すると、今後、67歳までの間、前記年収の25パーセントを減ずるものとみるのが相当である。


(4) 従って、前記年収を基礎に、中間利息をライプニッツ方式(症状固定時の27歳から67歳までの係数17.159)により症状固定時(原告の本訴請求の遅延損害金の起算日が平成3年6月25日であることに鑑み、本件事故当時の現価を算出するのは相当でない。)の逸失利益の現価を算出すると前記額となる。(算式 略)

(九) 傷害慰謝料(請求額133万2000円) 120万円
 原告の傷害の部位、程度、入院日数(19日)、通院期間、実通院日数(症状固定まで44日)等を考慮すると、右額が相当である。

(十) 後遺障害慰謝料(請求額648万円) 600万円
 原告の後遺障害の内容、程度、後記認定の本件事故の態様、結婚直後に本件事故に遭い、税理士としてのスタートに当たり、多大な不利益、負担を強いられたことその他諸般の事情を考慮すると、右額が相当である。

(十一) 物的損害(請求額6万2800円) 6万2800円
 証拠(略)によれば、原告の眼鏡、ズボン、ワイシャツ、Tシャツが破損、紛失したことによる損害は右額と認めるのが相当である。

(十二) 合計 被告らに対し 3363万1592円

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