小松法律事務所

詐病と心因性視力障害最重要文献-神経眼科21巻4号紹介1


○平成22年4月5日現在、被害者側交通事故事件を27件抱えていますが、いずれも難事件で力を入れて取り組んでいます。その中で平成17年に提訴し、実質当事者の任意保険会社と名実共に当事者の自賠責保険会社側との激しい応酬の末、平成21年秋にようやく当方依頼者の主張をほぼ全面的に認める第一審判決が出され、直ちに、保険会社側から控訴され、現在、控訴審で激しく争われている事件があります。

○この事件は,現在私が抱えている交通事故事件で最も古いものであり、依頼者は平成17年春に私の旧ホームページを見て依頼してきましたので、依頼時から既に5年が経過しました。先ず自賠責保険金請求から受任しましたが、等級が予想等級より遙かに低くかったため、平成17年秋に自賠責保険会社と加害者双方に対し訴えを提起し、4年後の平成21年秋にようやく第一審判決が出されました。依頼者からからは、この事件の顛末を公表して、同じように保険会社から苦しめられている交通事故被害者のために役立てて欲しいと言われております。

○しかし、現在、なお継続中のため詳細内容は書けませんが、事案は交通事故外傷後の視力・視野障害が外傷性視神経症、心因性視力障害、詐病のいずれかで争われています。勿論、依頼者は、実際治療に当たった主治医の診断に基づき外傷性視神経障害を主張していますが、保険会社側は、眼球に器質的損傷がないことを理由に詐病を主張して譲りません。

○交通事故外傷後、視力障害を訴え、それが詐病か心因性視力障害か争われる事案は数多くあるようで、日本神経眼科学会発行「神経眼科」第21巻第4号2004年12月号で「詐病と心因性視力障害」として特集され、369頁から422頁まで54頁に渡ってその道の専門家の座談会や論文が掲載されています。上記視力障害について激しく争われている間に、相当数の視神経障害に関する文献を当たって必要に応じて購入し、医学文献はホントに高価なものが多いため購入した金額は眼科疾患関係だけで7万円にも達しています。

○第一審判決までの時点は、この日本神経眼科学会発行「神経眼科」第21巻第4号2004年12月号は入手できておらず、控訴審段階になってから、保険会社側の激しい一審判決批判を見て、ネットで色々検索したところ、このこの特集の存在が判り、日本神経眼科学会事務局に連絡を取り、バックナンバーがあるとの確認をとって購入しました。

○その内容は、「詐病と心因性視力障害」の特集のため、残念ながら、外傷性視神経障害と心因性視力障害の区別について参考になる記述はありませんが、心因性視力障害についての記述は、おそらく現在日本のこの分野についての情報としては最高・最新のレベルと思われます。

○この特集は、日本神経眼科学会理事長で井上眼科病院院長の若倉雅登眼科医師と、慶應義塾大学医学部眼科学教室五代目教授小口芳久眼科医師との対談「眼科における詐病とその対策」から始まっていますが、「詐病と心因性視力障害」についての実に有益で示唆に富む言葉が随所に表現されており、大変、参考になるものです。更に弁護士、眼科医、保険会社員等の座談会「非器質的視力障害への対応」もまた有益な情報が掲載され、その後の眼科専門医の論文も有益です。その内容は別コンテンツで紹介しますが、この種事件には必須・必読の文献と言えるでしょう。