小松法律事務所

令和元年現在東京地裁交通事故民事訴訟の実情-ほぼピークに達したか?


○「平成22年10月現在東京地裁交通事故訴訟の実情-増加中?」の続きです。
令和2年2月24日に2020(令和2)年赤い本が届き、下巻講演録冒頭記事として、令和元年9月28日(土)開催東京地裁民事第27部部統括裁判官中村さとみ氏の「最近の東京地裁民事交通訴訟の実情」が掲載されています。

○「平成22年10月現在東京地裁交通事故訴訟の実情-増加中?」には、「東京地裁での交通事故訴訟事件新受件数は平成20年1370件、平成21年1477件、平成22年9月末現在1083件で増加傾向変わらず、昭和40年代半ばと同様の水準とのことです。」と記載していました。それから10年近く経過しましたが、令和元年9月の中村裁判官報告では、東京地裁民事第27部新受事件数は「平成29年当部発足以来過去最高の2196件、平成30年記録更新で2249件」となったとのことです。

○平成31(令和元)年の事件数は、8月時点で昨年同期の0.5%増とのことで、「近時の顕著な増加傾向はそろそろ収まる方向にあるのではないかと思われます。」と述べています。平成21年1477件だった東京地裁交通事故訴訟事件数は、平成30年には2249件で約52%増です。当HPの平成24年6月11日記載「交通事故専門?弁護士急増中」には、交通事故専門と称する弁護士HPの急増で、「私自身も含めてですが(^^;)、ポスト多重債務事件として、数多くの弁護士が交通事故事件に群がっていると言う感じです。」と記載されており、その頃から、交通事故事件は弁護士業務マーケッティングの最大のターゲットになっていました。

○さらに任意保険に弁護士費用特約がつくのが普通になり、弁護士費用特約の利用で弁護士依頼についての費用の壁が取り払われて弁護士に依頼しやすい状況となったことも交通事故訴訟増加に繋がっています。しかし、自動車の安全性能向上等により死亡事故等重篤交通事故が減少しており、中村裁判官が「近時の顕著な増加傾向はそろそろ収まる方向」と感想を述べているとおり、弁護士マーケッティングの対象としては、交通事故事件はピークを過ぎたかなと思っております。

○中村裁判官講演では、自転車の保険加入割合が全国平均で50%を超えたとのことで、自転車が加害者となる交通事故に関しても保険でカバーされる事案が増えてきているとのことです。当事務所でも、自転車同士の衝突事故案件を抱えており、約款等の精査が必要になっています。

○さらに民法の債権関係規定の改正による交通事故訴訟への影響についても勉強が必要性を指摘されており、交通事故訴訟のIT化にも予定されているとのことで、訴訟が合理化されるはずですので、その対応も検討していきます。