小松法律事務所

事故後の加害者の被害者への暴言で慰謝料増額を認めた地裁判決紹介


○被告が運転する自家用普通乗用自動車が歩行者である原告に衝突した交通事故に関し、原告が、被告に対し、民法709条に基づき、約120万円の損害賠償を求め、うち通院慰謝料として、被告は本件事故後原告に対して罵詈雑言を浴びせたこと,原告が110番通報を始めると被告が被告車で逃走したこと,本件事故当日に行われた実況見分で警察官に対し虚偽の指示説明をしたことなどの事情があり,30万円の増額を主張しました。

○これに対し、件事故後に被告が原告に対し,繰り返し,当たり屋だなどと言ったこと,原告が警察に通報したにもかかわらず事故現場から立ち去ったことなどを踏まえると,通院慰謝料としては105万円(通院期間7ヶ月の慰謝料85万円に20万円を増額)を相当とした令和3年7月21日名古屋地裁判決(自保ジャーナル2108号130頁)関連部分を紹介します。

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主   文
1 被告は,原告に対し,87万3478円及びこれに対する令和2年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は,これを10分し,その3を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求の趣旨

 被告は,原告に対し,119万6661円及びこれに対する令和2年3月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
1 本件は,被告が運転する自家用普通乗用自動車(以下「被告車」という。)が歩行者である原告に衝突した交通事故(以下「本件事故」という。)に関し,原告が,被告に対し,民法709条に基づき,損害金119万6661円及びこれに対する不法行為の日の後であり,自賠責保険金の最終支払日の翌日である令和2年3月28日から支払済みまで民法(ただし,平成29年法律第44号による改正前のもの。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 前提事実

(中略)

3 争点及び争点についての当事者の主張

(中略)

(原告主張)
(エ)通院慰謝料 127万円
 原告は,右肘挫傷及び左下腿挫傷の治療のため,約7ヶ月間通院した。こうした原告の精神的損害を慰藉するに相当な金額は97万円を下らない。
 また,本件における被告の過失の程度は重大であること,被告は本件事故後原告に対して罵詈雑言を浴びせたこと,原告が110番通報を始めると被告が被告車で逃走したこと,本件事故当日に行われた実況見分で警察官に対し虚偽の指示説明をしたことなどの事情があり,これらより原告の精神的苦痛は増大した。これを慰藉するに相当な金額は30万円を下らない。

(中略)

(被告主張)
(ウ)通院慰謝料
 原告は治療間隔を空けているから,仮に通院慰謝料が認められるとしても,実通院日数を参考に算定されるべきである。
(エ)慰謝料増額事由
 原告が主張する事実は否認する。仮にそうした事実があったとしても,著しく不誠実な対応として慰謝料を増額させるほどの事情とはいえない。

第三 当裁判所の判断
1 認定事実


(中略)

4 争点(3)(原告の傷害及び損害)について

(中略)

エ 通院慰謝料 105万円
 上記認定にかかる本件事故状況や傷害の程度,約7ヶ月間通院したという治療状況(中断期間を含むが,上記説示のとおり,医師の指示に基づくものである。),通院頻度に加え,前記1(3)で認定したとおり,本件事故後に被告が原告に対し,繰り返し,当たり屋だなどと言ったこと,原告が警察に通報したにもかかわらず事故現場から立ち去ったことなどを踏まえると,通院慰謝料としては105万円(通院期間7ヶ月の慰謝料85万円に20万円を増額)を相当と認める。