交通事故損害賠償請求権に対する仮差押効力について判断した地裁判決紹介
○事案の概要は以下の通りです。
・原告は、h22.9.19、C(当時14歳)・Hから強盗目的の暴行を受け急性くも膜下出血等重傷を負う(強盗致傷事件)
・Cの父亡Gは、h26.9.9、加害者被告との交通事故被害で死亡し、被告に損害賠償請求権取得
・原告は、Cの強盗致傷事件被害としてCに約4822万円の損害賠償請求権、亡Gにも監督義務違反として同額の損害賠償請求権取得したとして、亡G相続人の被告に対する損害賠償請求権を仮差押申立
・千葉地裁は、h27.11.13、上記仮差押命令
・この仮差押命令に対し、被告は自賠法18条差押禁止部分を除いて弁済の意思ありと陳述
・被告とCらは、亡G交通事故被害賠償金として約4053万円の支払義務を認める示談契約締結
・被告はh28.10.20頃Cら代理人口座に約3000万円を振込送金して支払
・原告はCらに対し、損害賠償請求訴訟提起し、h30.1.26、千葉地裁は約6417万円支払命令判決
・原告はCら債務者、被告第三債務者とする債権について転付命令を得て、h30.3.28確定
・被告は、転付命令について、h30.3.23、前記示談金から支払済み3000万円を控除した残額の支払意思ありと回答
・原告は被告に対し、転付債権として約4822万円の支払を求めて提訴
○原告の被告に対する請求事件での争点は、
①仮差押後にした示談契約の効力-被告は有効と主張
②被告の約3000万円の支払の効力-被告は有効と主張
③亡Gの被告に対する損害賠償請求額-原告は約5410万円、被告は示談額と主張
○これについて千葉地裁は
①について
被告は本件示談の効力を原告に対抗することはできず,被告の負う損害金の額は本件示談により確定した額に止まるものではなく,また,確定した損害金の範囲についても仮差押の効力は及んでいる
②について
不法行為に基づく損害賠償請求と本件16条請求権は別個独立の請求権であり,前者の仮差押えが禁止されていない以上,不法行為に基づく損害賠償請求権の仮差押債権者が,法的な期待や利益を有していないというものではないと解される。したがって,被告の弁済が,本件16条請求権に相当する金員の立替払的な支払であるからといって,これを原告に対抗することはできない。
③について
被告がした弁済は原告に対抗できないから,本件転付命令の確定によって,原告は本件示談で確定した金員のみならず,これを越える部分について転付を受けたと解することができる。したがって,原告は,被告に対し,シ(ア)(イ)の額(合計額4463万2789円)及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めることができる。
としてほぼ原告主張を認めました。